ネットショップのビジネスを行っている方から法人がいいのか、個人事業がいいのかご相談をうけることがあります。
良くあるご質問が、「法人化すれば、たくさん経費にできて節税できると聞いたのですが‥」というようなものです。
節税する目的は、自由に使えるお金を増やすためだと思います。
また、法人にすれば、見栄えが良くなるため、何となくで法人にしようとする方もいらっしゃいます。
税金面だけで法人化すると、かえって支出が増えてしまい、自由に使えるお金が少なくなってしまうケースが多くみられ、
中には法人化したことを後悔する方もいらっしゃいます。
その原因は、社会保険料が発生してしまうからです。
法人化を行う際には、本当に慎重に判断してください。
銀行からの融資を受けた後など一旦法人化した事業を個人に戻すことが難しいケースがあるからです。
これから自由に使えるお金がどうなるのか個人の場合と法人の場合で数事例で比較してみます。
前提として、自由に使えるお金を個人事業主の場合は、「生活費」として表示し、法人の場合は、「給与手取り」として表示しています。
事業の利益が500万円のケース
まず、事業の利益が500万円あるケースで個人と法人化したパターンを比較してみます。
グレーが税金等の負担で、黄色が自由に使えるお金となります。
500万円の利益のうち①個人の場合、税金、国保、年金の負担が125万円発生し、375万円しかオーナーの手取りとして残りません。
一方、②法人の場合、会社負担社会保険料、社長負担の社会保険料だけで120万円も発生し、税金は、多くありませんが、
給与の手取りは、356万円となってしまいます。
③個人の場合の生活費375万円>④法人の場合の生活費356万円となり、
個人事業の場合の方が手残りが多くなります。
さらには、法人にした場合、年間7万円の均等割りという税金が必ず発生し、
その上、法人の税金の申告は、非常に複雑で全部で数十ページに及ぶ資料を作成しなければならず、
ご自身で申告を行うことができませんので、税理士事務所への申告料金が年間最低10万円ほどかかってしまいます。
事業の利益が1000万円のケース
個人の税金のうち国に支払う所得税は、事業の利益が大きくなればなるほど高い割合で、かかってしまい、最高45%にまでなりまってしまいます。
よって、今度は、事業の利益が大きくなった場合、利益が1,000万円の場合で比較してみます。
この1000万円の利益のケースでも、 個人の場合の生活費695万円>法人の場合の生活費674万円となり、
個人事業の場合の方が手残りが多くなります。
その他の判断事項
輸入を行っているネットショップの方は、個人からスタートするがメリットが大きくなります。
なぜなら、消費税は事業をスタートして、2年間は通常かかりません。
個人事業で2年経過し、消費税がスタートするタイミングで法人化すれば、さらに2年間消費税を納めずに済みます。
この場合、最大4年間消費税を納めずに済みます。
特に輸入を行っているネットショップの方は、一般的に消費税が大きくなる傾向があるため、
個人事業としてスタートする方が良いケースが多いようです。
これまで、ネットショップの法人化のデメリットばかりの説明になっていましたが、
法人化を選ばざるを得ないケースがあります。
販売する商材の仕入先が個人事業主には販売しない場合です。
このようなケースですと、ビジネス上、法人でスタートするしかありません。
これらは、ご相談いただくあくまで一般的なケースに基づいて主なポイントについてご説明しております。
絶対的に個人事業主の方がメリットがあるケースばかりではなく、
個別に詳細を検討し、法人化をするべきか判断する必要があります。