ネットショップを経営するにあたって必ず抑えるポイントの一つとして、「売上金の回収と、仕入代金の支払いのタイミング」があげられます。
販売するサイトによっては売上の即日入金から翌月入金まで、回収スパンに大きな開きが出てきます。
一方、仕入代金の支払いも現金での即日払いから、クレジットカード等を利用して翌月の引落しといった支払いスパンに開きが出ます。
資金繰りを改善し、手元現金のキャッシュフローをより手厚くするためのセオリーは、
「売上の回収は早く、仕入れの支払いを遅くすること」です。
手元キャッシュに乏しいセラーの方であれば、回収スパンの早い販路を検討するか、回収スパンより長い仕入の支払方法(掛仕入やクレジットカードの利用)を検討する必要があるかと思います。
今回は現金仕入とクレジットカードによる仕入のバランスについて考えていきます。
現金仕入れとクレジットカードによる仕入のメリット・デメリット
現金仕入れのメリット及びデメリット
現金仕入れとは、商品仕入れの都度、現金や振込みによる支払いを行うことです。
現金仕入れのメリットは、仕入の都度にキャッシュの増減があるので、手元の現金ベース(キャッシュベース)に基づいた収支の把握を行う事ができ、損益=資金、キャッシュとなり、利益の把握がシンプルになります。
ただし、現金仕入れのデメリットとしては、手元資金が少ない場合に現金仕入れを多く行うとキャッシュフローが不安定になる恐れがあります。
クレジットカード仕入のメリット及びデメリット
一方で、クレジットカードによる仕入では、仕入れの都度に現金の支出はなく、各月の締日ごとに後日口座からの引落しが行われます。
利用するカード会社によっては、仕入れ後50日~60日後の支払い(引落し)に伸ばすことが可能であり、仕入れの支払いが売上の回収スパンより長くなれば資金繰り、手元のキャッシュフローの安定につながるというメリットがあります。
また、利用額に応じてポイント、マイル等がたまり、年間の仕入額が大きくなれば、非常に大きなメリットになります。
ただし、クレジットカードの仕入を行う場合、一時的にキャッシュフローが安定する反面で翌月以降のクレジットカードの引落し予定金額を把握する必要が不可欠となります。
また、複数のクレジットカードを利用し、仕入を行っている場合、手元資金の管理、具体的には10日毎など資金繰り表の作成等が必須となる等デメリットがあります。
クレジットカードから現金仕入れに切り替える場合の資金繰り上の注意点
よくあるご質問として、「来月からクレジットカード仕入を全て現金仕入れに切り替えようと思いますけど大丈夫でしょうか?」 というお声があります。
前述申し上げた通り、クレジットカード仕入と現金仕入れでは代金の支払いタイミングが違います。
このバランスを変えるという事はキャッシュフローに無理が生じる可能性も考えられるのです。
以下、例を使ってキャッシュフローを確認していきます。
ここに、A社は海外オークションサイトの販売の都度、PayPalに入金されるebay(イーベイ)で物販を行っています。
半年間の損益は以下のようなケースで考えてみます。
粗利益は毎月100万円(粗利率20%)、固定経費を差引後で毎月30万円のプラス収支です。
6ヶ月累計で180万円の利益金額となります。
A社は今まで仕入れの全てをクレジットカードで行っていましたが、1月から6月にかけて徐々に現金仕入れに切り替えていく予定です。
以下のように毎月の仕入額は一定して250万円ですが、以下のように徐々にクレジットカード仕入から現金仕入れへと切り替えてきます。
クレジットカード仕入に切り替えた場合でも毎月の損益は30万円のプラスですが、全てを現金仕入れに切り替えた場合、手元資金の動きは以下になります。
1月から6月までの合計利益は180万円にも関わらず、キャッシュ増減の累計は、マイナス70万円となってしまっています。
1月と6月のキャッシュ増減は収支額と同じ30万円ですが、2月から5月までの4か月間でキャッシュは増えるどころかマイナスになってしまいます。
現金仕入れに切り替えるという事は、今まで支払いを伸ばしていたものを即日払いにするという事です。
1月までは毎月250万円の仕入代金の引き落とし(クレジットカード)でしたが、2月からは前月仕入分のクレジットカードの引き落としに加えて、当月の現金仕入れがのっかってきて、資金負担が重なります。
仕入代金の支払いが再び250万円に落ち着くまでの4か月間はキャッシュフローが悪くなる危険性があるという事です。
まとめ
損益と資金=キャッシュフローの差が以上のような資金繰り悪化の原因です。
黒字倒産‥利益はでているが、資金ショートしてしまう状態です。
クレジットカードの変更による仕入サイトの変更、仕入の決済方法の変更、販路の変更などがある場合には、資金繰り表を作成し、これらの変更が長期的な資金繰りの観点、つまり、売上が急増した時、売上が急減した時、仕入価格が上がった時、下がった時などを踏まえ問題がないかどうか確認してから意思決定することが大切になります。
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