郵便局のEC、ネットショップ向けサービス「代金引換まとめ送金サービス」の経理処理方法について解説しています。
「代金引換まとめ送金サービス」は、郵便局が商品の送付を行うと同時に集金し、回収した代金をEC、ネットショップ事業者への支払いをお行うサービスになります。
「代金引換まとめ送金サービス」の経理処理方法と仕訳方法の解説に入る前に、「代金引換まとめ送金サービス」の仕組みが前提となるので、「代金引換まとめ送金サービス」の仕組み、料金体系について説明いたします。
目次
代金引換まとめ送金サービスの代引手数料、支払サイクル等について仕組みについて
集金払いと立替払いの違いについて
郵便局の代金引換まとめ送金サービスの入金サイクルについてですが、「集金払い」と「立替払い」の2つから選ぶことができます。
集金払い‥特定の期間内に集金した商品代金について回収することができます。
立替払い‥特定の期間内に引換・発送した商品代金について回収することができます。
対象期間において集金払いの場合は集金完了分、立替払いの場合には、引換・発送完了分の売上代金を回収することができます。
集金より引換・発送の方が先になるため、立替払いの場合の方、売上代金を先立って回収することができます。
そして大切なのは、集金払いか立替払いを選択するかによって、経理処理が異なります。
集金払い、立替払いの経理処理の違いについて以下で説明していきます。
集金払いと立替払いの締日と回収サイクルの違いについて
集金払いと立替払いで回収できるタイミングが異なりますが、対象期間、支払日、回収期間は以下のようになっています。
対象期間(締日) | お支払い日 | ||
集金払い | 毎月5、10、15、20、25、月末‥1つ以上を選択 | 締め日後5日又は10日のいずれかから選択 | |
立替払い | 週払い | 土曜日~翌金曜日 | 翌々水曜日 |
月払い | 毎月20日又は月末 | 締日から8日後 |
立替払いの場合には、売上代金入金後、返品が生じた場合には、次回の入金と相殺されます。
売上代金の回収期間が一番短いのは、発送ベースで売上代金の回収を行う立替払いの週払いで、発送ベースの売上を18日間で回収することができます。
立替払いを選ぶことができれば、売上代金の回収スピードが速くなり、資金繰り上有利に働きます。
しかし、立替払いは、超大口で代金引換まとめ送金サービスを利用するのみでしか、利用できず、ほとんどの場合には、集金払いでの申し込みになるようです。
商品代金別の代引手数料について
商品代金に応じて代引手数料が以下のように異なります。
商品代金 | 代引手数料 |
~30,000円 | 324円 |
~100,000円 | 540円 |
~200,000円 | 864円 |
~300,000円 | 972円 |
~500,000円 | 1404円 |
別途送金手数料がゆうちょ銀行へが一律130円、それ以外の銀行への入金の場合、432円(入金額が30,000円未満の場合には216円)となっています。
また、引換代金が50,000円が超える場合には、200円の印紙代の負担が必要となります。
以上が「代金引換まとめ送金サービス」の概要と料金体系になります。
「代金引換まとめ送金サービス」の経理処理方法について
ここからが「代金引換まとめ送金サービス」の経理処理、仕訳方法について説明していきます。
上記で少し触れましたが、集金払いと立替払いで経理処理が大きく変わります。
立替払いを選択した場合には、経理処理が比較的スムーズです。
経理上の売上の経理処理のタイミングは、商品を出荷した日がタイミングとなります。
商品出荷日=立替払いの決済日となるからです。
ただ、通常、集金払いになることが多く、場合によっては、経理処理が大変になります。
立替払いを選択した場合には、郵便局から送付される精算書上の売上(=決済金額)が商品発送日ベースで集計されるため、精算書をそのまま経理処理に使うことができます。
一方、集金払いを選択した場合で、発送したタイミングで売上の経理処理を行う場合、郵便局から送付される精算書上の売上(決済金額)が商品代金回収日ベースで集計されるため、精算書をそのまま経理処理に使うことができないからです。
立替払いの場合の経理処理・仕訳方法について
まず、簡単な立替払いの場合の経理処理・仕訳方法について説明していきます。
立替払いの場合、郵便局から送付される精算書をもとに経理処理を行っていきます。
計算期間が7月6日~15日で振込日が7月20日の精算額が965,168円の内訳が1,000,000円、決済手数料32,400円、印紙代2,000円、振込手数料432円の場合の仕訳は以下のようになります。
日付:7月15日
借方金額内容 | 借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | 貸方金額内容 |
今回精算額 | 売掛金 | 965,168 | 売上高 | 1,000,000 | 決済金額 |
決済手数料 | 支払手数料 | 32,400 | |||
印紙代 | 租税公課 | 2,000 | |||
振込手数料 | 支払手数料 | 432 |
そして、入金日については、以下の仕訳になります。
日付7月20日
借方金額内容 | 借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | 貸方金額内容 |
入金額 | 普通預金 | 965,168 | 売掛金 | 965,168 | 入金額 |
立替払いの場合の経理で注意すべきは、締日の関係で、計算期間が月をまたぐ場合です。
この場合には、それぞれの月ごとの決済金額をベースに上記の仕訳を行う必要があります。
集金払いの場合の経理処理・仕訳方法について
集金払いの場合の経理処理について説明いたします。
売上の経理処理のタイミングは、1つだけではなく、企業や取引の方法によって、いくつかの認められている経理処理の中から選択することができます。
商品を発送したタイミングで売上の経理処理を行う方法や商品を納品したタイミングで売上の経理処理を行う方法があります。
納品日のタイミングで、売上の経理処理を行う場合と発送日のタイミングで、売上の経理処理を行う場合とで経理処理方法が大きく異なります。
集金払いの場合、郵便局から送られてくる「精算書」には、納品=集金ベースでの売上金額とそれに対応する代引き手数料が記載されています。
よって、納品日のタイミングで、売上の経理処理を行う場合には、精算書の売上=納品日の売上となるため、上記の立替払いの場合と同じように郵便局から送られてくる精算書を使い、同じように経理処理を行うことになります。
発送日のタイミングで売上の経理処理を行う場合は、精算書の売上=発送日の売上とならないため、郵便局から送られてくる精算書を使い、経理処理を行うことができません。
よって、発送日のタイミングで売上の経理処理を行う場合には、月ごとに発送した商品内容、商品数、販売代金などを把握するための自社の販売、在庫管理が必要となります。
販売・在庫管理とは、仕入れた商品を納品した都度、販売、在庫管理用のシステムに入力し、商品が出荷・発送した都度、販売、在庫管理システムに入力することで、仕入れた商品、販売した商品、保有している商品を見える化することです。
商品数が少ない場合にはエクセルなどで行うことができますが、商品数、売上が増加すると、エクセルだと非常に手間がかかってしまいます。
エクセル上で販売、在庫管理ができない場合、自社で販売、在庫管理を行う場合、システム上で、販売・在庫管理を行うことなるかと思いますが、代表的な在庫管理ソフトでは、弥生販売、ネクストエンジンやクロスモールなどがネットショップ、ECで利用することが多いかと思います。
また、自社で販売、在庫管理を行なっておらず、リピロボやショップリストなどを使って販売、在庫管理を行っている場合には、リピロボ、ショップリストなどのシステム上で販売、在庫管理を行うことになります。
これらで郵便局の代引きに関して、代引手数料を正確に経理処理する場合には、引換金額によって、代引き手数料が異なるため、月ごとの代引き金額ごとの件数を把握する必要があります。
つまり、引換金額が~30,000円の販売件数、30,001円~100,000円の販売件数、200,001円~300,000円の販売件数、300,001~500,000円の販売件数、それぞれを把握する必要があります。
仮に、ひと月ごとの代引き金額ごとの件数を把握して以下のように1月当たりの代引き手数料を集計します。
商品代金 | 1件あたりの代引手数料 | 販売件数 | 1月の代引手数料 |
~30,000円 | 324 | 100 | 32,400 |
~100,000円 | 540 | 30 | 16,200 |
~200,000円 | 864 | 20 | 17,280 |
~300,000円 | 972 | 10 | 9,720 |
~500,000円 | 1404 | 5 | 7,020 |
合計 | 165 | 82,620 |
そして、引換金額が50,000以上の場合、印紙代の集計が別途必要になります。
このように集計して、経理処理を行う場合、非常に手間がかかってしまいます。
よって、おすすめは、入金時に、代引き手数料を経費処理する方法です。
この方法の場合、仮に7月分の1か月分の代引き分の売上が1,000,000円だったとすると以下のような経理処理になります。
借方金額内容 | 借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | 貸方金額内容 |
商品売上高 | 売掛金 | 1,000,000 | 売上高 | 1,000,000 | 商品売上高 |
そして、7月1日~15日が計算期間で、7月20日入金分の郵便局から送られてきた精算書の精算額が439,928円に対する決済額が450,000円、決済手数料8,640円、印紙代1,000円、振込手数料432円の場合の仕訳は以下のようになります。
借方金額内容 | 借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 | 貸方金額内容 |
今回精算額 | 売掛金 | 439,928 | 売掛金 | 450,000 | 決済金額 |
決済手数料 | 支払手数料 | 8,640 | |||
印紙代 | 租税公課 | 1,000 | |||
振込手数料 | 支払手数料 | 432 |
この方法によれば、代引手数料の経費の処理のタイミングは、1月ずれる可能性がありますが、精算書をそのまま使えるので、経理の手間は、それほどかからないと思います。
手間を選ぶのか、正確性を選ぶのか‥
ここで参考になるのが、経理を行うに当たって、基本となるルール、考え方の一つに「重要性の原則」です。
重要性の原則とは
重要性の原則とは、経営上重要な取引は、正確性を重視して、経理処理する必要があり、一方、経理上重要でない取引は、簡単な経理処理を行っても良いとする考え方です。
メリハリをつけて、大切な取引とそうでないところによって、手間の掛け方を変えることができるのです。
重要な取引かどうかは、基本的には、金額的に重要であるかとどうかによって判断します。
そして、利益の金額をベースに影響、インパクトがあるものについては、重要な取引として、正確に経理処理し、そうでないものはできるだけ手間をかけずに経理処理します。
この代引き手数料で考えてみると、通常、利益に対して、大きな影響、インパクトはない金額になることが多いのではないでしょうか。
よって、この代引手数料は、利益に対して、大きな影響がある場合を除き、入金時に経費処理する方法を選択しても問題ないと思います。
この重要性の原則は、経理処理を行う上で、全般に関わる考え方で、非常に経理処理にできるだけ手間をかけず、スピーディーに行うために必要な考え方です。
是非参考にされてみてください。
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